メニュー

漢方薬治療

[2020.05.12]

今回のブログは当院でも積極的に処方している漢方薬について書きたいと思います。

私は外科医なので今まではずっと手術のことばかり考えてきましたが、クリニックで働き始めてからは一番興味があるのが実はこの漢方薬です。

脳神経外科領域でも最近では漢方薬を処方することがここ最近多くなってきましした。ご高齢の方が頭をぶつけた後、しばらくしてから発症する慢性硬膜下血腫に対しては五苓散(17番)を処方するのがほぼ常識となってきました。また、私自身も風邪に対する葛根湯(1番)や花粉症の時期の鼻水に対する小青竜湯(19番)、胃薬として六君子湯(43番)、二日酔いを軽減する茵蔯五苓散(117番)などを愛用して内服しております。また日本脳神経外科漢方医学会学術集会という脳神経外科領域の漢方薬に関する学会もあり、毎年参加して勉強させていただいています。ここでは漢方薬との出会い、また今までの自分の実際の経験を書いていきます。

”モダンカンポウ”との出会い

私が漢方薬に興味を持ち始めたのはドイツから帰国後の清水時代です。それまでにも慢性硬膜下血腫に対して五苓散は処方することはありましたが、私の中では漢方薬といえばほぼ五苓散でその他の漢方薬を積極的に処方することはありませんでしたし、深く勉強しようと思いませんでした。

そんな私の意識が変わったのはある漢方薬のセミナーを受講してからです。それは慶應義塾大学医学部の大先輩である帝京大学医学部の新見正則教授の提唱する”モダンカンポウ”という漢方薬に関する新しい概念のセミナーでした。

日本の医学部では西洋医学を学ぶために、漢方薬を学ぶ機会はほとんどなく、漢方薬はどこか遠い存在で取っ付きにくいものでした。また外科医である私は本当に効果があるのかと疑念すら持っていました。そんな中で慶應の外科医局の先輩でもある新見先生のセミナーでは、我々は基本的に西洋医であり漢方薬は西洋医学の補完的に使うといい、と漢方薬に対する考え方を端的に説明していただきました。手術一辺倒だった脳神経外科医の私にもこれは説得力のある言葉で、漢方薬に対する偏見が取り払われました。また伝統的な漢方医学は用語や診察が今まで習ってきた医学とは異なるために戸惑いを感じていましたが、新見先生の提唱するモダンカンポウはそれをすべて無くして症状に応じて漢方薬を処方するという、理にかなった使いやすい方法でした。漢方薬が一回で効果がある確率は良くてもイチローと同じくらいの打率(3-4割)で、もし効果がなければいろいろ試していくことが重要ということも漢方薬を積極的に処方しはじめるのに勇気づけられる言葉でした。

新見先生によると、西洋医の医師免許で漢方薬を保険医療内で処方できるのは日本だけらしいので、我々は漢方薬を処方するのに非常に恵まれた環境にあるそうです。私はセミナー後に実際に新見教授ともお話をさせていただき、それからは積極的に漢方薬を使っていこうと決意しました。その後は新見先生以外の先生の漢方セミナーにも積極的に参加し1セミナー1漢方薬マスターをモットーに漢方薬の使い方を勉強していきました。

自身の漢方薬の使用経験

新見先生の「まずは自分と家族で試してみてください」という言葉通り、私自身と家族に葛根湯や小青竜湯等を今まで使っていた以上にいろいろ試してみました。確かに風邪の引き始めや鼻水に漢方薬が効果的でした。特に宴会の前の二日酔い対策として茵蔯五苓散はおすすめです。

また患者さんにも実際に処方しました。慢性硬膜下血腫に患者さんに対しての五苓散は今まで以上に処方しました。一つ一つ例を述べるときりがないですが、例えば元気がなかったり、食事の食べられないようになった患者さんには補中益気湯(41番)を処方すると、全員ではありませんが元気になり食事が食べられるようになる患者さんもいました。打撲をしてひどく腫れている患者さんには治打撲一方(89番)を処方すると腫れが引くのが通常より早かったりしました。(89番は匂いと味は結構きついようですが・・・)今までの私自身の経験でも、漢方薬はすぐに効果があるわけではなく徐々に効果をはっきし、また全員の患者さんに効くわけではなく、一部の患者さんにしか効果がないというのが今までの感触です。

個人的に愛用して自身でも内服している漢方薬

私の漢方薬への見解

先ほども書きましたが、漢方薬ですべての人が治癒したり症状が改善するわけではありません。戦後日本人の寿命が延びたのは明らかに西洋医学の普及が原因であり、それまでに使っていた漢方薬が原因ではありません。なので新見先生と同じく、現代の医療の基本は西洋薬や手術といった西洋医学が中心にあるべきで、補完的に漢方薬を使うのがいいと思います。また、漢方薬は長い歴史の経験に基づいて調剤されていますが、いまだに効用や薬の作用がすべて解明されているわけではありません。

ただ、人知の結晶ともいうべき漢方薬への知恵を全て否定するのももったいないと思います。漢方薬は薬というよりも食品の延長上にあるものと考えており、一部を除き副作用がほとんどありませんので、安心して内服することができ、効果がなければ他の漢方薬に変えて試すこともできます。また日本では保険医療内で安価に処方できる点も大きいです。

私自身は脳神経外科医であり手術をずっとやって医師で漢方医学を専門にやっている訳ではありません。漢方薬を患者さんに処方しても症状が改善しないことはたびたび経験してきましたし、症状が改善せずいろいろ漢方薬を変えて試していくことも今までありました。また症状が改善していくのも時間がかかることがあり、気長に内服していくことも重要です。今後も患者さんとよくご相談しながら漢方薬を使っていきたいと思いますので、漢方薬の処方のご希望があればご相談ください。

市村院長が漢方薬でお馴染みの「ツムラ」のwebセミナーで気象病と小児の頭痛に対しての漢方薬の講演をいたします。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME